「うちの子のかんしゃくがひどくて…」「切り替えができずに困っています」
そんな悩みを抱える保護者の方へ。発達わんぱく会では、こども本人・家族・支援者が一緒に笑顔になれる支援を実践しています。この記事では、現場で実際に効果を上げている6つの支援ヒントを、明日からすぐに取り入れられる形でお伝えします。
はじめに:発達支援は「特別なこと」ではない
発達支援は特別な技術ではなく、日々の小さな工夫の積み重ねです。発達わんぱく会では「"できた!"を積み重ねる支援」を大切にし、 こどもの笑顔を増やすことを目指しています。
発達わんぱく会の支援理念
- こども本人が主役の支援
- 保護者に寄り添う
- 小さな成功の積み重ね
- 地域で当たり前に暮らせる社会づくり
ヒント1:環境調整を最優先する - 「できる環境」をつくる
環境調整の基本理念
「できる環境づくり」を優先するのが発達わんぱく会の支援です。こども自身を変えるより先に、環境を変えることで"できた!"が生まれます。 この理念に基づき、発達わんぱく会では以下のような具体的な環境調整を実践しています。
発達わんぱく会の環境調整実践例
視覚支援ツール
(1)物理的環境の工夫
- 物の定位置を写真で明示
- 「片付けボックス」の使用
- 余計な刺激を排除したスペース
(2)スケジュールカード
- 終わった活動は裏返しまたは別箱に移動
- 「次は何?」の不安の軽減
(3)タイムタイマー
- 順番待ちが苦手な子への時間の見える化
- 「あとどのくらい?」を視覚的に表示
- 不安の軽減と見通しの提供
(4)座席マーク
- 集団活動での自分の場所を明確化
- 好きなキャラクターやマークを使用
- 空間の構造化で安心感を提供
年齢別環境調整のポイント
2-3歳:基本的な安心環境
- 同じ場所、同じ手順の確立
- 視覚的な手がかりを多用
- 感覚刺激の調整
4-5歳:社会性を育む環境
- 小集団での役割分担
- ルールの視覚化
- 友達関係を考慮した座席配置
家庭でできる環境調整
今日からできる5つの工夫
- 朝の支度コーナー:制服や持ち物を一箇所に集約
- 専用スペース:気が散る要素を排除した環境
- 見える化スケジュール:1日の流れを写真で表示
- お片付けラベル:おもちゃボックスに写真ラベル
ヒント2:小さな「できた!」を大切にする - 成功体験の積み重ね
なぜ小さな成功に注目するのか
大きな目標達成よりも、日々の小さな「できた!」を積み重ねることで、こどもの自己肯定感が育ちます。発達わんぱく会では小さな成功を見逃さず、こども本人と保護者と成功を一緒に喜び合うことを大切にしています。
褒め方のコツ
効果的な褒め方の3要素
- 具体性:「頑張ったね」ではなく「袖に腕を通せたね」
- 即時性:できた瞬間にすぐ褒める
- 共感性:こどもの気持ちに寄り添う
ヒント3:「待つ勇気」を持つ - こどもの自主性を引き出す
なぜ「待つ」ことが重要なのか
大人が急かすことで、混乱してしまうこどもは多くいます。こどもが自分で考え、行動に移すまでの時間を確保することが、成長への第一歩となります。この「待つ」ことの重要性を理解し、発達わんぱく会では具体的な「待つ支援」を実践しています。
視覚的な「待つ時間」の伝え方
場面別実践例:運動遊びの準備
4歳のAくんは、おあつまりの前に靴下を自分で脱ぐ練習をしています。
しかし支援者が「早くして」「まだなの?」「みんな待ってるよ」と急かすと分からなくなり、混乱して泣き出してしまうことがありました。
背景にあるのは「次の行動が分かっても、心と体が追いつかない」状態です。
【支援方法】
- 「座ったら片足の靴下を下げます。」と一つずつ順を追って伝える
- 準備カードを使って見通しをもたせる
- 周囲の大人は焦らず静かに待つ
【効果】
Aくんが自分で靴下を手に取り、悩みながらも両足の靴下を脱ぐことができるようになったその瞬間、支援者はそっと「できたね」と声をかけます。
するとAくんは、次第に泣くことなく、自分から準備を始められるようになりました。
支援者の心構え
10秒は長い:支援者にとっても「待つ」は難しいスキル
こどもの内的時間を尊重:その時間はこどもにとって貴重な思考時間
成功体験の土台:待った結果の「できた!」は大きな自信につながる
ヒント4:選択肢を与える声かけ - こどもの主体性を育む
選択肢のある声かけが効果的
命令形の声かけ(「今すぐ片付けて!」)よりも、選択肢を提示する声かけの方が、こどもは納得して行動に移しやすくなります。これはこども自身が「選んで決めた」という達成感を得られるためです。発達わんぱく会では以下のような選択肢提示法を用いています。
発達わんぱく会の選択肢提示法
場面別実践例
お絵かきの片付けの場面
❌ 「今すぐ片付けなさい!」「お絵かき終わり!すぐ片付けて!」→ 急に終わらされてパニックになり、癇癪を起こしてしまう。
⭕ 「今から片付ける?それともタイマーが鳴ったら片付ける?」「この絵をかき終わってからおしいまいにする?」→ 「終わりへの見通し」が立ち、納得して片付けられる。
トイレ誘導の場面
❌「今トイレ行って!」→ 「今すぐ」が伝わりづらく、拒否や混乱に。
⭕「トイレ行くのと、お水飲むのどっちが先がいい?」→ 行動の順番を自分で決められることで、不安が軽減されスムーズに切り替えられる。
選択肢提示のコツ
- 2択にする:選択肢は2つまでに絞る
- どちらも受け入れ可能:提示する選択肢はどちらでもOKなものにする
- 具体的に示す:抽象的ではなく具体的な選択肢を提示
ヒント5:行動の前後を観察する - 困った行動には必ず理由がある
なぜ行動観察が重要なのか
こどもの「困った行動」には必ず理由があります。表面的な行動だけを見るのではなく、その前後の状況を観察することで、本当の原因が見えてきます。
行動観察
観察する3つのポイント
- きっかけ(前): 何が起こった時に行動が始まったか
- 行動(中): 具体的にどんな行動をしたか
- 結果(後): その行動の後に何が起こったか
実践事例:帰り支度のかんしゃく
【問題】 Bくん(5歳)が毎日帰り支度の時間にかんしゃくを起こす
【観察結果】
きっかけ:楽しかった製作活動の終了
行動:泣き叫ぶ、床に寝転がる
結果:活動時間が延びる、注目を集める
【支援方法】
予告の実施:「あと5分でお片付けです」「あと3分です」
移行支援:製作物を「お家で見せる」という楽しみを提示
視覚支援:タイムタイマーで残り時間を見える化
なぜ小さな成功に注目するのか
- 集中しやすい座席位置
- 学習道具の整理整頓
- 休憩スペースの確保
ヒント6:集団活動での工夫 - 社会性を楽しく育む
発達わんぱく会の小集団プログラム
発達わんぱく会では、楽しみながら社会性を育むことが重要だと考えています。そのため、個別活動、小集団プログラムを通じて、自然な形で社会性を身につける機会を提供しています。
集団参加を支える3つの工夫
1.事前の見通し提供
活動前の準備
- 当日のスケジュールを視覚的に提示
- 活動内容を写真で事前説明
- 役割や順番を明確化
2.写真カードとスケジュール
- 次の活動が分かる安心感
- 「いつまで?」の不安解消
- 自分のペースでの参加促進
3.簡単な役割設定
個々の特性に応じた役割
- 得意分野を活かした係活動
- 「お手伝い」という特別感
- 責任感と達成感の育成
集団参加が苦手な子への段階的支援
Phase1: 観察参加
- 同じ空間にいるだけでOK
- 無理に参加させない
- 興味を持てる環境作り
Phase2: 部分参加
- 好きな場面だけ参加
- 短時間から開始
- 成功体験を重視
Phase3: 完全参加
- 最初から最後まで参加
- 自主的な参加を促進
- リーダーシップの発揮
家庭でできる集団参加準備
日常生活での練習
- 協力する:一緒にお手伝い
- 順番を守る:簡単なルールゲーム
- 友達を意識:近所の子との関わり
まとめ:こどもの笑顔を増やす
発達わんぱく会からのメッセージ
発達わんぱく会は「地域でその子らしく暮らせる社会」を目指し、こどもたちの"できた!"を増やす支援をこれからも続けていきます。
6つのヒントの振り返り
- 環境調整:できる環境づくりを優先
- 小さな成功:日々の「できた!」を大切に
- 待つ支援:自立を促す時間の確保
- 選択肢提示:こどもの主体性を育む
- 行動観察:困った行動の理由を見つける
- 集団活動:社会性を楽しく育む
支援を継続するためのポイント
1.完璧を求めない
- 毎日少しずつの成長を大切に
- 失敗も学びの機会と捉える
- こどものペースを尊重
2.チーム支援
- 家族だけで抱え込まない
- 専門機関との連携
- 支援者間の情報共有
3.長期的視点
- 発達は螺旋階段のように進む
- 後退も成長の一部
- その子なりの成長を見守る
次のステップ
このヒントが、日々の支援・子育ての中で小さな気づきとなり、皆さまとこどもたちの笑顔が増えるきっかけとなれば幸いです。日々支援を続ける皆さまの姿勢そのものが、こどもたちの力になります。
発達わんぱく会のサポート
利用できるサービス
- 個別療育:一対一の丁寧な支援
- 小集団療育:社会性を育む集団プログラム
- 家族支援:発達相談や保護者向けの療育相談・研修
- 相談支援:サービス等利用計画書の作成
- 地域連携:学校や園との連携支援
相談・見学について