
発達が気になるこどもの運動会
秋の気配を感じる季節になりました。
幼稚園や保育園では、運動会の練習が始まる時期ですね。
運動会が近づくにつれて、こどもたちの「ソワソワ」「ドキドキ」も少しずつ大きくなっていきます。
特に発達障害のあるこどもにとって、「これから何が起こるのか分からない」という状況は、大きな不安につながることがあります。
「次に何をするのか」
「どんな場所に行くのか」
「いつ終わるのか」
あらかじめ分かっていれば、びっくりすることが減り、安心して一歩を踏み出しやすくなります。
また、運動会の練習期間は、普段の園生活とは日程や過ごし方が変わります。
「みんな」で一緒に動く時間が増えたり、自由に過ごせる時間が少なくなったりすることもあります。
さらに本番では、いつもの園生活とは違い、たくさんの人や大きな音など、普段とは異なる刺激に囲まれます。
それだけで不安になったり、落ち着かなくなったりするこどももいるでしょう。
そこで今回は、運動会を少しでも安心して迎えるための「見通しの持たせ方」や、不安を軽減する工夫をご紹介します。
ことばだけで、
「次はかけっこだよ」
「そのあとお弁当だよ」
と伝えても、頭の中でこれからの流れをイメージすることが難しい場合があります。
そんなときに活躍するのが、イラスト(絵カード)や写真です。
たとえば、
「お着替え」
↓
「かけっこ」
↓
「お茶を飲む」
↓
「お部屋に戻る」
というように、イラストや写真を上から順番に並べておきます。
終わった工程のカードをひっくり返したり、カゴに片付けたりして、「終わった」ことが目で分かるようにします。
「ゴール(終わり)が見える」ことも大切です。
「あと少し頑張ればいいんだな」と分かることで、こどもの安心につながります。

「運動会」ということばそのものが、経験の少ないこどもにとっては「何をするのか分からない謎のことば」かもしれません。
そこで、ことばだけではイメージしにくい部分を、スマホやタブレットの動画・写真で補ってみましょう。
去年の様子や大人の見本動画を見せる
「こんなふうに並ぶんだよ」
「みんなでこのダンスを踊るよ」
と、短い動画を見せてあげます。
動画なら、本番は練習とは違って、たくさんの人がいるということも伝えやすくなります。
何度も繰り返して見ることで、こども自身が頭の中で少しずつシミュレーションでき、本番に向けたこころの準備
会場の写真を事前に見せる
運動会の会場が近隣の小学校の校庭や、いつもとは違う体育館などの場合は、事前に誰もいない会場の写真を撮って見せてあげるのもおすすめです。
「今度、ここに行くよ」
と伝えておくだけでも、当日の
「知らない場所に来ちゃった!」
という不安やパニックを防ぎやすくなります。
「あと何回寝たら運動会?」
それが目で見て分かるようになると、こどももこころのペース配分がしやすくなります。
「運動会まであと5日」
「あと4日」
というように、毎日こどもと一緒に1枚ずつめくっていきます。
カレンダーに運動会のマーク(旗のイラストなど)を書いたり、練習がある日にシールを貼ったりします。
「この日はお休みだから、いっぱい遊ぼうね」
とメリハリを伝えることも、毎日の練習を乗り切るための力につながります。
こどもに、お気に入りの靴下やタオルはありませんか?
「これを持っていると、力を分けてくれるよ」
「〇〇が守ってくれるよ」
と、おまじないのように伝えることで、保護者がそばにいない時間のこころの支えになることがあります。
身につけても違和感のないものや、ポケットに入るくらいのサイズのものがいいですね。
年に1回しかない運動会。
最初から最後まで、ぶれることなく参加しきることは、こどもにとって簡単なことではありません。
そして「運動会」は、小学校に行っても、そのあともまだまだ続いていきます。
だからこそ幼稚園・保育園の間は、先生と一緒に、
「今年の目標は〇〇」
と、その子に合った目標を立てられるといいですね。
たとえば、
・今年はダンスのこの振付ができるといい!
・クラスの応援席で過ごせるといい!
・いつもの先生や友達のそばで隊形移動をする!
などなど。
「全部できたかどうか」だけではなく、本番でのその子の“キラキラポイント”をたくさん見つけられるといいですね。
たとえ目標を達成できなくても大丈夫。
そのこどもなりの参加方法は、まだまだあります。
焦らず、恐れ過ぎず、「運動会」という行事を楽しむ余裕を持てるといいですね。

やっと練習の日々が終わったと思ったら、運動会本番は、いつもとは違う刺激に満ちています。
練習では楽しく参加できていた子。
逆に、練習にはなかなか参加しなかったのに、本番では急に完璧にダンスする子……。
こどもによって、いろいろな「本番での姿」があります。
では、本番にできる工夫にはどんなものがあるでしょうか。
このように、先生と相談しながら「できること」「難しいこと」を一緒に考え、どんな工夫ができるのか検討してみましょう。
これまで園生活の中で、どんな配慮をしてもらったことがあるのかを事前に振り返っておくのもいいですね。
どれだけ事前に見通しを立てる工夫をしても、当日の雰囲気や大きな音に圧倒されて、泣いてしまったり、動けなくなったりすることもあります。
そんなときこそ、
「〇〇さんなりの参加ができたね」
「練習をがんばったこと、ちゃんと知っているよ」
という周りの大人の優しい眼差しが、こどもにとって大きな安心につながります。
運動会で大切なのは、「みんなと同じようにできたか」だけではありません。
スモールステップで、
「これなら安心できる」
「運動会に参加できた」
という、その子なりの経験を一緒に見つけていけたら素敵ですね。

「こころとことばの教室こっこ」では、こども一人ひとりの「できた」「やってみたい」という気持ちを大切にしながら、その子に合ったスモールステップでの療育を行っています。
日々の生活や園での行事など、こどもが安心して一歩を踏み出せる方法を、ご家族と一緒に考えていきます。