
【学術誌『小児保健研究』に論文が掲載されました】
このたび、認定NPO法人発達わんぱく会 理事長の小田知宏による論文
「医療と福祉との連携による児童発達支援地域モデル構築の可能性と課題
― 江戸川区児童発達支援連絡会の取り組みを題材に ―」 が、
公益社団法人 日本小児保健協会が発行する学術誌
『小児保健研究』第84巻第6号(2025年) に掲載されました。
本論文は、医師・看護師・保健師・保育士・歯科医師など、
小児保健の分野で子どもと家族の支援に関わる専門職を主な読者とする
学術誌に掲載されたものです。
近年、発達障害への社会的な認知が広がり、
児童発達支援事業所の数は大きく増加してきました。
しかし一方で、支援の「量」の拡大が、必ずしも
支援の「質」の向上や、複雑化・多様化するニーズへの対応に
十分つながっているとは言えない現状があります。
特に、診断名がつかないものの集団生活に困難を抱える子どもたちへの支援では、
福祉サービスだけで対応することの限界があり、
医療・保健・福祉・教育が連携した地域支援システムの構築が不可欠です。
しかし現実には、制度の壁によって連携が十分に評価されず、
その結果、保護者が「情報の橋渡し役」を担わざるを得ない状況が
各地で生まれています。
こうした課題に向き合う中で、
東京都江戸川区では、福祉の現場が主体となり、
医療・行政と連携する形で
「江戸川区児童発達支援連絡会(江児連)」 が2019年に設立されました。
江児連は、児童発達支援事業所を中心に、
医師、行政担当者などが「顔の見える関係」を築きながら、
地域全体で子どもと家族を支えることを目的とした団体です。
論文では、以下のような具体的な取り組みが紹介されています。
設立に至るまでの背景
医療と福祉が対等な立場で学び合う研修の実施
行政への政策提言
医師と療育現場の相互理解の深化
江児連の活動を通じて、
医師と福祉事業所の間に「共通言語」が生まれ、
子どもの生活と医学的視点の双方を踏まえた
より多角的な支援が可能になってきました。
また、研修を通じた支援者の専門性向上や、
医療機関と事業所間での円滑な紹介体制の構築といった成果も報告されています。
一方で、これらが明らかになりました。
連携を支える財源や組織の持続可能性
報酬制度が多職種連携を十分に評価していない点
母子保健や教育分野とのさらなる連携の必要性
本論文は、こうした現場主導による地域モデルの試行錯誤が、
江戸川区だけでなく、
同様の課題を抱える全国の地域にとって
実践のヒントとなることを目指してまとめられています。
発達わんぱく会は、
「ひらく、つながる、育ち合う」 という理念のもと、
今後も現場での実践を大切にしながら、
学術・医療・福祉・地域社会とつながり、
すべての子どもが安心して育つことのできる社会の実現に
貢献してまいります。
📘 掲載誌
公益社団法人 日本小児保健協会
『小児保健研究』第84巻第6号(2025年)
※ 本号は会員限定公開となっています。